外食産業の経営者と関わらせて中で、下記のようなご質問を頂くことがありました。
「焼肉屋を売りたい」
「焼肉屋の一部店舗を売却して新しい事業を展開したい」
「焼肉店を買いたい」
コロナ禍でお客様の求めるニーズも多様化している現在、特に繁華街に出店していらっしゃる場合は新たな事業転換を求められていることもあるでしょう。売りも買いも、いずれにしても、検討されている方が増えています。今回は焼肉屋の事業売却を検討している方に向けて、売却時の「注意点」と「考えるべき視点」というテーマでお伝えします。最後までお読み頂ければ、事前にどのようなことを考え準備しておけば良いかが明らかになるはずです。
焼肉屋を売却する時の注意点と考えるべき視点について
焼肉は居抜きで売却しやすい業態と言われています。なぜなら、開業の際に立地や物件所有者、貸主などから制限を受けるために完全な新規出店が難しい業態だからです。
特に居抜きでの焼肉屋の売却には、考えるべき注意点や視点というものがあります。これは、居酒屋業態とは違い焼肉業態を作る際には初期の設備投資が多くかかるものだからです。そのため、売却時に買い手から見られるポイントも細かくあります。
それでは実際に、具体的にどのようなところが評価され、買い手の目に留まりやすくなるのかを解説していきます。
焼肉屋を売却する時の注意点は?
焼肉屋を売却する時の注意点は、焼肉屋特有の設備の状態です。
これらを見ていきましょう。
ダクト(排気・排煙工事)の整備について
焼肉屋を売却する時の注意点一つ目は、ダクト(排気・排煙工事)の整備に関する部分です。なぜなら、焼肉屋では排煙がスムーズに行われるかがお客様の満足度に直結することに加え、開店初期の設備投資で費用が大きく発生しやすいものだからです。ダクトについて、主に見られるポイントとしては下記が挙げられます。
- 排煙機能が優れているか
- ダクト内部が汚れにくいものか
- メンテナンスが簡単なものか
それぞれのポイントをうまくアピールできるかが売却できるかを左右します。また、ダクト自体は種類によって機能が異なるため、自店舗のダストがほかの店舗のものと比較してどのように違うのかを整理し伝えることもおすすめです。
焼肉屋の専門設備について(ロースター・炭場・網洗い)
焼肉屋を売却する時の注意点二つ目は、焼肉屋専門の設備であるロースター、炭場、網洗いに関してです。
そもそも、焼肉屋にはロースターを使って焼く店と七輪を使って焼く店に分かれます。ロースターを使うお店については、熱源と焼き面の組み合わせで食材へ火の通り方が変わるため、ロースターの状態について詳しく見られます。
特に、煙の発生そのものを抑えるノンダクトロースターなどを使用している場合には、売却時の高評価となる可能性があります。なぜなら、ロースターの導入は初期のコストが多くかかるからです。しっかりとメンテナンスが行われ、整えられている状態が望ましいですね。
次に七輪を使って焼くお店については、炭場と網洗いの場所が見られる部分となります。特に、網洗い機の有無やその状態について見られることになります。網洗い機の購入費用は50万円程度からとなるため、初期投資を抑えたい買い手側としては確認したいポイントとなります。
ロースターや七輪、いずれの場合であっても売却後に引き継ぐ事業者にとって、コストが掛からない状態に設備が整っていることが焼肉屋の売却時に置ける重要なポイントになります。
衛生管理(清潔さ・クリンネス)の状態について
衛生管理状態は、焼肉屋の売却時には他の飲食店を売却する際よりも特に重要なポイントになります。なぜなら、焼肉屋は床や天井、壁紙などが特に汚れやすい業態だからです。汚れている状態だと買い手側に清掃コストの負担が増えるため、その分のコストを考慮され居抜き買取の際には価格交渉を受けてしまう可能性があります。ある程度の年数が経ったお店でも清掃がされて清潔感が保たれている状態であれば、内覧の時の印象が全然違います。高額売却を目指すためには、日ごろの営業から清潔さを保つことが重要です。
買い手目線で見られる重要な点は?
ここからは焼肉屋の事業を買いたいと考える買い手側の目線で、見られる重要ポイントをお伝えします。このことを抑えておくことにより、実際の交渉時にも役に立つため必見です。
立地条件について
店舗の立地条件は、買い手側として集客上大きな影響があるため最重要項目となります。というのも、繁華街、オフィス街、住宅街エリアなのか、そのことを踏まえた上でそれぞれどのような層がメイン顧客になり得るのかなど、そのような情報はお店を経営する上で非常に大切な情報であるからです。
買い手側はどのような客層にどのようなサービスを提供し、どんなお店にしたいのかという視点で物件を検討しています。営業していた際のうまくいっていた点、改善点などを踏まえて情報を伝えられると買い手側から喜ばれます。
また、それ以外の点では、駅前一等地にある路面店などは大手チェーンなどに押さえられているケースが多く、そもそも物件の空きが出にくいものです。そのような好立地の場合は、希少性を伝えられると高額売却が期待できます。
仕入れ先の確保について
仕入れ先の情報については、買い手側が個人店として新たに経営する場合に重要な情報になります。チェーン展開をしていたり自社農場を持っている場合は、一度に大量の買い付けができるため仕入れ時の値引き交渉ができ安く仕入れることができます。しかし、個人店経営などの場合はそのようなまとめて大きな発注をすることが難しいため、仕入れコストが割高になってしまいがちです。
買い手側の心配や負担を減らすために、下記に述べる方法を案内すると売却交渉時の付加価値となり成約率の向上に役立ちます。
卸肉屋からの仕入
卸肉屋からの仕入れは、個人購入を受け付けていない企業もあります。しかし、近年の傾向では個人での購入も受け付けるところが増えているようです。
その一つの例として挙げられるのが、インターネットによる通信販売です。ただし注意点として、その卸肉屋が一次問屋なのか、それとも二次、三次問屋であるかについては押さえておく必要があります。
下の階層になればなるほど、一般的に仕入れ時のコストが高くなるからです。これらの情報を踏まえた上で、有利な卸肉屋を紹介できると良いですね。
食肉センターからの仕入
食肉センターとは、食肉の流通合理化のため農林水産省の指導により 1960年から全国に設置された食肉処理施設です。この食肉センターからの仕入れにより、高い鮮度と安全性を維持された肉を仕入れることができます。独自にルートを持っている場合は、紹介することにより大きな付加価値となり得ます。
生産者から直接仕入
食肉となる牛などを飼育している生産者からの直接仕入れは、買い手側としては直仕入れでこだわりを持っていることをPRできるためメリットになります。また、生産者側としては新たな取引先の開拓になります。生産者、買い手側どちらにも喜ばれる紹介となるため、生産者との直接の繋がりを持っている場合はとても良い情報の提供になります。
サイドメニュー・ドリンクの利益について
近年、牛肉の仕入れ原価は高騰しています。そもそも焼肉屋は、通常の居酒屋と比較すると原価率は高くなることが多いですよね。
そのため、原価率の低いサイドメニューやドリンクで利益を増やすことが重要なことになります。商品提供にあたっての情報や取引先の紹介があると、買い手側から喜ばれる情報になります。
集客と客層に関する情報について
いかに集客するかがお店の経営を左右します。
そのために重要なのが、これまで営業していた際の集客状況や客層に関する情報です。売却前に改めて、来店している客層を分析しておきましょう。
【例】
(1)エリア特性:繁華街・ビジネス街・住宅街
(2)客層:会社員・学生・主婦・高齢層
(3)曜日:平日・休日・週末祝前日
(4)時間帯:ランチ・ディナー・深夜帯
(5)利用シーン:ファミリー・飲み会・デート・女子会・記念日
上記の項目をそれぞれ整理分析することで、買い手側としてとても貴重な情報になります。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
焼肉屋を売却する際には、買い手目線で考え、重要な項目を押さえて準備をすることがとても大切です。これまで経営してきたノウハウや情報、取引先などの紹介も付加価値として提供できる部分であり、そのことが事業売却の成功率を高めることに繋がります。まずは事業の売却に向けて情報収集から始め、専門家に相談することがおすすめです。