和菓子屋はいくらで売る?売却価格の算定方法と和菓子製造販売がM&Aで人気の理由

「後継者が見つからない」「資金繰りが苦しい」このような理由によって和菓子店の売却を検討している経営者の方も多いのではないでしょうか?和菓子店は後継者不足が深刻化している業種です。

しかし、世界的な日本食ブームの中、和菓子も国際的な注目を集めており、国内・国外を問わずに「日本の和菓子店を買いたい」という企業は数多く存在します。また、和食の普及に伴い和菓子の販路も多様化しているので、M&Aによって販路を大きく拡大することができる可能性があります。和菓子店を売却するメリットや売却金額の算定方法等、和菓子店のM&Aについて分かりやすく解説していきます。

和菓子店売却の3つのパターン

和菓子店を売却する理由は経営者の方針や店舗の経営状態によって様々なですが、基本的には以下の3つの理由が考えられます。

  • 大手小売企業などの傘下に入る
  • 後継者不足によって同業者へ売却する
  • 資金繰りに苦しくなり売却する

和菓子店を売却する3つの理由について詳しく解説していきます。

大手小売企業などの傘下に入る

1つ目の売却パターンが大手小売企業などの傘下に入るケースです。

大手が和菓子店を買収することには、大手と和菓子店それぞれに次のメリットがあります。

  • 大手チェーン:人気の和菓子店を自社ブランドなどとして販売
  • 和菓子店:自社では生産できないロットを資本注入によって生産可能になる

個人店舗であれば生産不可能だった数の和菓子を生産・販売できるようにするために和菓子店が大手小売店などの傘下に入るケースがあります。

後継者不足によって同業者へ売却する

和菓子店の売却で最も多い理由が後継者不足です。和菓子店は経営者夫婦2人で営まれていることが多く、後継者が存在しない店舗もかなりの数存在します。「先祖代々の和菓子屋を名前だけでも継続したい」という思いから買い手を希望する和菓子屋は少なくありません。

資金繰りに苦しくなり売却する

資金繰りに苦しくなって売却するケースもあります。地方に所在する和菓子店などは、地域の高齢化によって顧客数が減少し売上を維持することが難しくなっています。しかし、借入金があるので「営業をやめたくてもやめることができない」と頭を抱えている経営者も少なくありません。そこで「和菓子店を売却し、売却代金で借入金を完済したい」と考える人も多いようです。

和菓子店の売却の今後の見通し

そもそも和菓子店自体は今後どのような見通しなのでしょうか?基本的には国内の需要は人口減少や高齢化に伴い縮小していく見通しですが、海外での日本食ブームに伴い、国際的な需要は拡大していく可能性があります。

後継者不足によって売却を希望する店は増えていく

和菓子店の大半が高齢の夫婦だけで経営しています。今後はさらに和菓子店の後継者不足は深刻化していくでしょう。事業承継のために売却を検討する和菓子店はさらに増えていくことが予想されることから、今後は和菓子店は買い手市場が続いていくものと思われます。和菓子店を買いたいと考える人や企業にとっては、味も腕も信頼もある優良な和菓子店を安価で買収できるチャンスでしょう。

和菓子を海外展開したい企業は多い

和菓子の国内市場は食の欧米化と人口減少によって縮小していきますが、海外では増加傾向です。今は国際的な日本食ブームです。これにともない、海外では和菓子が注目を集めています。和菓子は「WAGASHI」として世界共通語になりつつあり、国際的な需要は伸びていく見通しとなっており、今後は海外展開したい企業がさらに増えていくでしょう。

売り手企業にとって和菓子店を売却するメリット

売り手企業が和菓子店を売却することには以下の3つのメリットが考えられます。

  • まとまったお金が手に入る
  • 従業員の雇用とブランドを残せる
  • 自社の和菓子の販路が飛躍的に広がる

資金面だけでなく、雇用とブランド守った上で、これまで販売してこなかったような人に対しても自社の和菓子を食べてもらうことができるでしょう。

和菓子店を売却する3つのメリットについて詳しく解説していきます。

まとまったお金が手に入る

和菓子店を売却すれば、経営者はまとまったお金を手に入れることができます。

  • 借金を返済する
  • 老後資金にあてる

など、自由に使うことができるので、和菓子店の経営から解放され悠々自適な老後を送れたり、別の事業を始めることもできるでしょう。

従業員の雇用とブランドを残せる

売却によって経営者個人は経営から解放されますが、従業員の雇用や長年培ってきた和菓子のブランドは残すことができます。買収する企業は従業員のノウハウとブランドが欲しくて和菓子店を買い取るのですから、売却しても高い確率で雇用とブランドを守ることができるでしょう。また、買い手企業に「雇用とブランドを守る」という条件をつけた上で売却することも可能です。

自社の和菓子の販路が飛躍的に広がる

買い手企業が和菓子の販路を広げることを目的に買収した場合には、これまでは地域の人にしか販売してこなかった和菓子を日本中や世界中に広げることができるでしょう。多くの和菓子店は作ることのノウハウを持っていても販路を拡大するノウハウを持っていません。販路を広げることができる企業へ売却すれば、先祖代々培ってきた自社の和菓子を世界中の人に食べてもらうことも可能です。

買い手企業にとって和菓子店を買収するメリット

買い手企業が和菓子店を売却することのメリットは2つです。

  • 技術力の高い人材が手に入る
  • 和菓子のブランドや信頼が手に入る

長い時間をかけなければ育たない人材とブランドを買収によってすぐに手に入れることができます。買い手側にとって和菓子店を買収するメリットを詳しく解説していきます。

技術力の高い人材が手に入る

和菓子の職人は一朝一夕で育つものではありません。数年から10年かけてやっと1人前になると言われる世界ですので、ゼロから職人を育てようと思えば長い時間をお金がかかります。和菓子店を買収することによって、技術力の高い職人をすぐに雇用することができるのは非常に大きなメリットです。

和菓子のブランドや信頼が手に入る

和菓子店のブランドは歴史が非常に重要です。「創業100年」とか「安政元年創業」などの歴史は、味とは無関係に和菓子にとっての大きなブランドと信頼になります。そして、もちろんこの歴史はすぐに作ることは不可能です。歴史ある和菓子店を買収することによって、歴史によって培われてきたブランドも手に入れることができます。これはゼロから創業した場合には絶対に手に入れることができない買収だけのメリットです。

和菓子店の売却額の算定方法

「自分の和菓子店はいくらで売れるのだろうか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか?

基本的に和菓子店の売却額は以下の3つの方法のいずれかで算定します。

  • 企業価値から算出する
  • 将来の利益から算出する
  • 株価や類似会社から算出する

和菓子店の売却額算定方法について詳しく解説していきます。

企業価値から算出する

財務諸表を元に企業価値を算出する方法です。

企業価値を算出する方法としては時価で算出する方法と、簿価で算出する方法があります。

  • 「時価の総資産−時価の負債」で会社の純資産額を算出する方法
  • 「貸借対照表の総資産額−貸借対照表の負債額」で会社の純資産額を算出する方法

この方法では、粉飾決算をしていた場合も企業価値に含まれてしまう点や、将来予想される利益を加味できないという問題点があるのであまり利用される方法ではありません。

将来の利益から算出する

買収対象の和菓子店に将来期待される利益を加味して和菓子店の買収金額を算出する方法です。

この方法は、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と配当還元法という2つの方法がありますが、配当金額は経営者自身でも決められるため客観性がありません。そのため、利益から買収金額を算定する方法としてはDCF法が用いられることが一般的です。

DCF法

DCF法では、会社の利益から必要経費を差し引いた金額であるフリーキャッシュフローを求め、フリーキャッシュフローの5年分を現在価値に割り引いた金額を買収金額として算定します。例えば、現在価値に割り引いた1年間のフリーキャッシュフローが1,000万円だった場合には、その5年分である5,000万円が買収金額となります。

株価や類似会社から算出する

最後は株価や類似会社から算出する方法です。同業種同規模の上場企業の株価を元に買収金額を計算したり、上場している株価を元に買収金額を算出する方法です。いずれの方法も和菓子店が上場企業もしくは上場企業並みの規模が必要になるので、個人経営の和菓子店の買収では使われることはまずありません。

和菓子店の売却金額はDCF法が用いられ「買収金額はフリーキャッシュフローの5年分」と理解しておきましょう。

和菓子の買取事例

和菓子店の売却は実際に行われています。自社の事例ではありませんが、銀行などが斡旋した実際にあった和菓子店のM&Aの事例をご紹介します。

事業承継のためのM&A

銀行ではM&Aの仲介も行っています。知人の銀行員の話として、東海地方の老舗和菓子店が後継者不足をM&Aで解消した以下の事例があります。

東海地域で名店と言われ、創業150年を迎えた和菓子店。経営者夫婦には子供が1人いるが東京の商社へ就職し、和菓子店を継ぐ意思はない。先祖代々続いた和菓子店のブランドと、従業員の雇用だけは守りたいと売却を希望した。隣県の大手和菓子店が創業150年のブランド引き継ぎたいと、買収に名乗りを上げた。雇用もブランドも守られ、今では買収企業の所在する隣県でも和菓子の販路を拡大している。

経営の行き詰まりをM&Aが解消した事例

地域で最大6店舗まで拡大した大手の和菓子店。

一時は売上を先代の20倍まで拡大したが、コンビニ等が台頭した影響で苦しい経営を迫られるように。販売先を増やそうと自社で営業をかけたものの思うように売上を拡大することはできない。M&Aによって状況を打破したいと買収先を探していたところ、東京の百貨店や海外にも広く販売網を有している食品販売会社が見つかった。M&Aによって、これまで販売することができなかった東京の百貨店や海外にも販路を広げることができ、前経営者もそのまま社長として経営に携わっている。雇用を守ることができた上に、和菓子のブランドはさらに多くの人に知られるようになった。

和菓子店の売却を希望するなら専門家へ相談しよう!

これから先、後継者不足によって売却を希望する和菓子店は増えてくる見込みです。「売りたい」とただ希望しても自社のブランドを拡大し、従業員の雇用を守ることができるような優良な買い手が見つかるわけではありません。和菓子店の売却を希望するのであれば、豊富な情報を持つM&Aの専門家へまずは相談してみましょう。相談することによって「どのくらいの金額で売却できるのか」という具体的な数字や、売却できるまでの具体的な手続きをイメージすることができます。「和菓子店を売却したい」「和菓子店を買収したい」と考えている方はまずは気軽に相談してみましょう。