ペット葬祭業を事業売却(M&A)するとしたら!売りたいと思ったときの準備とポイント。

ペットブームが拡大する中、ペットを人間と同じく火葬し埋葬する「ペット葬祭業」の需要が高まっています。かつては外飼いが基本だった犬や猫は、最近では室内飼いが一般的となり、死後も人間同様の弔い方が求められています。ペット葬祭業の需要が高まる背景には、どのような理由があるのでしょうか。今回はペット葬祭業の人気の理由と、M&A含む動向などについて解説します。

ペットブームが起こる背景

ひと昔前は「防犯用」や「ネズミ捕り」のため、犬や猫を飼う家庭が多かったですが、近年のペットブームには異なる目的があります。ペットブームが起こる理由を見てみましょう。

2000年以降は「癒し」目的へ

2003年に行われた内閣府の調査によると、ペットを飼う目的は「実用」から「癒し」へと変化しています。1983年の時点で19.4%に過ぎなかった「気持ちをやわらげる」という飼育理由は、2003年の回答では47.9%を占めています。一方、「役に立つから」と回答した人は、13.9%から9.9%へ減少しています。

ホテル、美容院など専門施設が充実

ペットブームが起こる一因には、ペット関連サービスや施設が充実し「飼いやすくなった」点が挙げられます。従来のペットショップやグッズ販売店の他、近年はホテルや医療、保険、美容院、シッターとペット関連事業は多岐にわたります。マーケット総額は1兆5,000億円程度と言われており、大幅な増加こそないものの、数年にわたり堅調に推移しています。

コロナ禍で第二次ペットブームへ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要の影響から、ペットショップでの販売数や動物保護団体への譲渡申し込みが増加し、第二次ペットブームが到来しています。一般社団法人「ペットフード協会」によると、2020年度に新たに飼われた犬と猫は、どちらも推計で前年より6万匹以上増加したそうです。また、東京都内のあるペットショップでは、ペット1匹あたりの相場がコロナ前の約1.5倍に昇りました。ただし、こうした動きは一過性のブームに過ぎず、近い将来の飼育放棄を危惧する声もあります。

ペット葬祭業が必要な理由

ペット関連サービスが多角化する中、近年ペット葬祭業の需要が高まっています。ここでは、ペット葬祭業が誕生した背景と人気の理由について解説します。

ペットは「家族の一員」

かつてはペットが亡くなった場合、自治体が管理する焼却場へ運んで焼いてもらうのが一般的でした。ペットの遺骸は、法律的には「廃棄物」として扱われるため、ゴミとして出しても問題はありません。ただ、飼い主の心理的に「ゴミとして処分すること」に抵抗を覚える人がほとんどです。さらに、自治体の焼却場を利用した場合、他の動物たちとまとめて焼かれる「合同火葬」のため返骨されず、他の遺骨と共同で埋葬されるのが一般的です。

そのため、返骨可能で様々なプランが用意され、家族の感情に配慮したペット葬祭業が誕生しました。個別火葬もでき、ペットを「家族の一員」として捉える昨今の飼い主にとって、人間同様の弔い方ができると人気のサービスとなっています。

埋葬場所の問題

かつてペットの犬や猫は、亡くなると自宅の庭に埋葬するケースも多々ありました。しかし、近年は庭の無い一戸建てや、ペット可のマンション・アパートで犬や猫を飼う人が増えたため、ペットが亡くなっても埋葬する場所がありません。そのため、ペット葬祭業のニーズが高まったとされています。

ペットの「少子高齢化」

人間同様、ペットも「少子高齢化」が進んでいます。高齢のペットが増え、ペット全体の中でかなりの割合を占めるようになり、高齢ペット用のグッズや犬猫用の介護施設、ペット葬が誕生しました。

ペット葬祭業の利用実態

ペット葬祭業が人気とはいえ、実際に利用している方はどの程度いるのでしょうか?ここでは、ペット葬祭業の利用実態と、利用できるペットの種類、火葬方法などについて解説します。

ペット葬利用者は約7割

2019年に実施された“メモリアルなび“の調査によれば、犬・猫を直近3年以内に亡くした経験のある飼い主のうち、民営のペット葬サービスを利用した人は全体の約7割だったそう。そのうち、「ペット霊園で火葬・埋葬」「ペット霊園で火葬後、自宅保管または散骨」を選択した人は全体の半数以上で、ペット霊園の認知度が浸透していることが窺えます。また、「訪問火葬後、埋葬」「訪問火葬後、自宅保管または散骨」を選択した人は全体の1割程度と、訪問火葬を行う人も増えています。

犬・猫以外も…多彩なペット

ペット火葬においては、全体の約9割が犬・猫という実態です。特に犬は全体の6割以上を占め、犬種の上位はミニチュアダックスフントやチワワなどの小型犬となっています。犬・猫以外ではうさぎやハムスター、鳥類などがおり、ほとんどのペット葬儀業者で幅広いペットの葬儀に対応しています。ポピュラーなペットでないため、対応してもらえるだろうか…と不安に思う方も多いようですが、ペットの多様化と同時に、ペット葬儀を執り行う動物の種類も多様化しています。

「合同火葬」より「個別火葬」

複数のペットの遺骸をまとめて火葬する「合同火葬」。また、1体ずつ火葬する「個別火葬」。ペット葬儀を行う場合、全体の約7割以上が個別火葬を希望しています。火葬費用を比較すると、例えばハムスターなら合同火葬の場合は6,000円程度、個別火葬の場合は10,000円程度が相場です。多くの飼い主は、たとえ費用が高くなっても、ペットを人間と同じように弔いたいと思っているようです。

約7割が「ペットと同じ墓」希望

前述した“メモリアルなび“の調査によれば、ペットと同じお墓へ入りたい飼い主は全体の7割程度に昇ります。ただし、人間がペットと同じお墓に入るにはいくつかの障壁があります。例えば、霊園や墓地が限定されるため、先祖代々の一般墓にペットが入れない場合や、新たにお墓を所持する際にかかる費用などです。また、個人用のお墓ではない場合、ペットの遺骨を入れる際に他の親族の同意を得る必要がありますし、個人用のお墓であっても、後継ぎとなる承継者を誰にするかといった問題があります。

ペット葬祭業の市場規模と動向

ペット葬祭業のマーケットは、多岐にわたります。ペット葬そのものの費用や仏壇・遺骨アクセサリー、海上散骨の代行サービス料金、墓石・永代供養料などです。中には十万円単位のものもあり、マーケット総額は300億円~350億円と言われています。昨今はペットと一緒に入れるお墓を購入する飼い主も増え、ペット葬ビジネスは拡大傾向にあると見込まれています。

また、近年はペット関連サービスにおけるM&Aも盛んです。すでにペット保険やペットシッター業などで、フランチャイズやM&Aによる全国展開のサービスが行われています。ペットサービスは今後ますます多岐にわたると予測でき、ペット葬祭業においても、企業淘汰やM&Aによる統合再編等が活発に行われる見込みです。

まとめ

ペットブームの昨今、ペット葬祭業は欠かせない業態の一つと言えます。ペットを「家族の一員」とみなす飼い主も増え、ペット葬ビジネスは今後ますます発展していくでしょう。ペット関連サービス全体のM&Aも活発に行われており、ペット葬祭業への新規参入や規模拡大を行う会社も増加していくと見られています。