給食業界・中食ビジネスを売却(M&A)するなら。お弁当・惣菜事業を売るときのポイント

お弁当や惣菜の製造・販売事業、また給食事業は、社会的要因から人気の高い業態の一つです。昨今のコロナ禍もあり、従来の製造・販売からケータリング・宅食事業に参入する企業も多く、今後ますます柔軟なサービス展開が行われる見込みです。今回は、食品業界において中食・外食部門に分類されるお弁当・惣菜・給食事業の業態の特徴や市場規模、M&Aの動向などについて解説します。

「中食」を担うお弁当・惣菜・デリ事業

高齢化や共働き世帯の増加により、需要の高い「中食」。お弁当・惣菜(デリ)事業は中食市場で、どのような役割を担っているのでしょうか。ここでは中食の人気の理由と、お弁当・惣菜事業の特徴について解説します。

「中食」ブームの背景

持ち帰ってすぐ食べられる気軽さから、人気が衰えることを知らない中食。その業態は多岐にわたり、お弁当・惣菜事業はもちろん、スーパーやコンビニも中食に分類されます。昨今のコロナ禍の影響で、飲食店もテイクアウトやデリバリー事業へ参入し、外食から中食へと切り換わっている店舗が多いです。その他にも、晩婚化や核家族化など、中食を利用する背景には様々な社会的要因が関係しています。

「中食」ブームが生まれたきっかけは、主に二つです。一つ目は、2019年10月から導入された「軽減税率」。店内飲食の場合、消費税は10%ですが、テイクアウトなら8%のため、需要が拡大したと見られます。二つ目は、前述したコロナの影響です。飲食店の時短営業や外出自粛規制、テレワークの増加が重なり、デリバリー事業者やテイクアウトを取り扱う店舗が増え、消費者は多彩な店舗とメニューから選択が可能となりました。

多くの飲食店が中食の品質を争うようになり、中食ブームにはますます拍車がかかっています。

お弁当・惣菜・デリ事業とは?

お弁当・惣菜事業は、中食市場の中でも営業コストが低い業態です。大きな物件は必要なく、テイクアウトなら調理スペースと販売スペースのみ確保できれば運営できるため、設備投資が少ないという特徴があります。ホールサービスも基本的にないため、場合によっては1人でも営業できますし、居抜き物件を利用すれば手軽に開業しやすい業態と言えます。

ただし、コンビニやスーパーなど中食市場の競合店は多く、オリジナリティーあるメニューと美味しさが無いと、成功は難しいと言えます。近年はデパ地下人気も高いですが、商店街の弁当屋・惣菜屋も根強い人気があり、忙しい主婦や一人暮らしのお年寄りなどに重宝されています。消費者のニーズをつかむため、地元の特産品や季節感を出した食材を使用するなど、顧客を飽きさせない工夫が必要です。

ありふれたメニューを提供するだけでは決して成功しない業態ですが、味と価格と立地のバランスが良ければ、地域住民に長く愛される店舗となる可能性は高い業態です。

「外食」を担う給食事業

食堂やレストラン等へ出かけて食事をすることは「外食」です。給食事業は外食に分類され、二種類の形態があります。ここでは、給食事業の種類と動向、課題点について解説します。

給食事業の種類2つ

給食事業には、「営業給食」と「集団給食」の二種類があります。両者は、提供する顧客層が異なります。営業給食では、食堂・レストランなどの飲食店や、ホテル・旅館などの宿泊施設において、不特定多数の顧客向けに飲食サービスを行います。一方、集団給食では、学校給食や病院給食、企業の社員食堂など特定多数の顧客向けに継続的な飲食サービスを行います。

集団給食の動向

一般的には小学校までとして認知されている学校給食ですが、近年では中学・高校へのニーズも高まっています。共働き世帯が増えたことで、お弁当昼食は歓迎されない傾向にあるようです。また、同様に保育所給食も人気があります。待機児童が増え、調理室の無い認可外保育園や特定地域保育事業を利用する家庭が多いからです。保育所等の利用児童数は、人口減少が叫ばれている昨今においても増加し続けており、今後も保育所給食のニーズは高まることが予測されています。高齢化社会の進行によって高齢者施設給食も注目されており、給食業界は社会的・経済的側面からの影響が大きい特徴があります。

給食業界が抱える課題

給食業界で働くには、体力が必要です。しかし、業界全体の給与は低い傾向にあり、離職率が高いという課題があります。離職率が高ければ人手不足につながってしまい、需要と供給のバランスが取れていない業態と言えます。

お弁当・惣菜・給食事業の市場規模

食品製造業界においてお弁当・惣菜・給食事業は、どの程度の業績を占めているのでしょうか。一般社団法人・日本フードサービス協会による「平成30年の外食市場規模」統計から、それぞれの市場規模について見てみましょう。

お弁当・惣菜業は「料理品小売業」

お弁当・惣菜事業は同データにおいて「料理品小売業」に分類されます。2018年時点で、同ジャンルの業界業績は7兆8,647億円と報告されており、前年比2.1%増の結果となりました。お弁当・惣菜事業の需要は今後も増加傾向が続くと見られており、食品製造業界全体の成長を底上げする存在と言えます。また、食品製造業界の新たな市場として宅配サービスの需要が高まっているため、宅配事業が活発化すると見られています。

「給食主体部門」は20兆円超え

給食事業は同データにおいて「給食主体部門」に分類されます。こちらも2018年時点で、業界業績は20兆7,926億円と報告されており、実に外食産業の約8割を占める結果となりました。学校や保育所、事業所、病院などで提供される「集団給食」に限って言えば、昭和62年に大台の3兆円に乗って以降、平成30年度まで3兆円台の業界業績を維持しています。少子化で子どもの数は減っているものの高齢者が増えているため、給食業界の市場規模は今後も安定が見込まれています。

お弁当・惣菜・給食事業のM&A特徴

様々な業態が存在する食品製造業界。お弁当・惣菜・給食事業のM&Aには、どのような特徴があるのでしょうか?それぞれについて見てみましょう。

お弁当・惣菜事業のM&A

お弁当・惣菜事業は初期投資が比較的安く抑えられるため、新規参入しやすい業界です。外食業界や内食業界、中食業界内の他業種によるM&Aも活発化しており、近年は同業種間のM&Aで関係を強化を図るケースも増えています。また、女性向け・高齢者向けのニーズが高まっていることから、健康関連業界からの参入も目立ちます。お弁当・惣菜事業のトレンドは周辺業界の動向に影響されるため、企業には柔軟な対応力が求められています。

給食事業のM&A

給食事業においては、近隣業者による参入や大手企業による食堂事業の切り離し、同業の給食事業者によるM&Aが活発化しています。前述のデータ通り、給食事業は飲食業界の中でも堅調な業態と言えますが、中小規模の会社は大企業との価格競争に勝てず、M&Aを選択する所も多い実態があります。買い手企業が大企業であれば大量仕入れによる食材費の引き下げや、人材採用コストなどの面でM&Aによるシナジー効果を得やすいという特徴があり、今後もM&Aの需要は拡大する見込みです。

まとめ

お弁当・惣菜・給食事業は、現代社会に欠かせない業態の一つです。人口が減少しているにも関わらず、市場規模は拡大し続け、消費者ニーズは多様化しています。幅広いニーズに対応できるよう、近接業界または同業界内でのM&Aが活発に行われており、今後も変容しながら顧客の食生活を支える業態として期待されています。