規制緩和により参入が増え、障害者の放課後等デイサービスは増加してきています。しかし、稼働率が低く、経営が不安定な事業所も多いのが現状です。優秀なスタッフに定着してもらい、利用者の欠席対策を行い、魅力的なサービスを提供し、稼働率を向上させるにはどうすればよいのでしょうか。障害者の放課後等デイサービスの経営を成功させるためのポイントについて説明します。
障害者の放課後等デイサービスの欠席対策
放課後等デイサービスにおいて黒字の施設と赤字の施設を比較した場合、赤字の施設の方が稼働率が低いという傾向があります。経営を安定させるためには、稼働率を上げることが重要なのです。利用者の欠席対策をどのように行えば稼働率が上がるのかについて説明します。
欠席を減少させる方法
稼働率を上げるためには、欠席を減少させる必要があります。現状の利用者を維持するコストは、新規利用者を増加させるコストよりも10倍以上低いと言われています。まずは欠席を減らすことを考えるべきなのです。具体的には次のような対策が考えられます。第一に、欠席の少ない利用者に皆勤賞を与えることです。手作りの賞状、メダル、ちょっとした景品でもいいのですが、何らかの形づけとともに評価をしてあげることが励みになります。また、その様子を見ていた他の利用者も、自分も休まず来ようという動機付けになります。第二に、送迎を行っている場合は、通所日の前日に「明日迎えに行きます」という電話連絡を行っておくことです。第三に、欠席した場合に、別の日への振替利用を打診することです。第四に、継続して通いたくなるようなプログラムを準備することです。何らかのスキルを獲得するための支援を行い、日々、利用者がスキルアップを実感できていれば、続けて通所したいと考えていただけるようになります。
欠席時対応加算
欠席対策を行っていても、欠席は必ずあるものです。風邪などの体調不良、家庭の都合、本人の気分が乗らないなど理由は多々あります。欠席の場合は、欠席時対応加算をできるだけ取得しましょう。保護者が、利用日の前々日から当日までの間に欠席の連絡をしてきたら、必ず相談援助を行い、内容を記録して、欠席時対応加算を申請しましょう。
障害者の放課後等デイサービスの稼働率向上
稼働率向上のためには、放課後等デイサービスの本来業務に力を入れることが重要です。利用者のニーズに合わせた個別支援計画にて、利用者の目標を設定します。個別支援計画と稼働率向上について説明します。
個別支援計画策定と通所日数
放課後等デイサービスでは、保護者と共に、可能であれば利用者本人とも合意した目標を決め、個別支援計画を策定します。その目標設定に対して、最大限多くの支援内容と利用スケジュールを設計し、支援を進めていきます。目標に応じて理想的な通所日数を設定し、それだけ通所するとどのように利用者の成長に貢献できるのかを保護者に説明します。保護者と利用者本人が、実際に成長を実感できれば、通所日数を増やしたいと思っていただけます。
新規利用者の募集
稼働率向上のためには、新規利用者を募集して定員数を増やし、さらに通所日数を増やしていくという方向性も必要です。新規利用者の募集を行うにあたって効果的なのは、施設の情報をウェブサイトやブログ、SNS等を活用して日々、発信していくことです。支援方針、支援プログラムの内容、職員体制、感染症対策等を公開することによって、施設探しをしている保護者に情報と安心感を与えることができます。
障害者の放課後等デイサービスのスタッフの定着
障害者の放課後等デイサービスの経営を成功させるには、優秀なスタッフに定着してもらい、利用者に対して質の高い支援を提供することが根幹となります。優秀なスタッフの確保と定着のポイントについて説明します。
優秀なスタッフの確保
放課後等デイサービスの求職者は、施設のウェブサイトを見ます。サイトの中で関心を持たれるのは、施設の理念に加えて、スタッフの業務内容と日々の様子です。スタッフの思いを掲載したり、スタッフを紹介する動画を作成して公開したりすれば、応募率は高くなると考えられます。また、今後増加してくる中高年齢者の求職に対応していくことも必須です。中高年齢者の採用を前提とした人事制度を構築し、勤務シフトを配慮したり、短時間正規職員制度の導入を検討したりしていくことが、優秀なスタッフの確保につながります。
スタッフ定着のポイント
スタッフ定着率を高めるために必要なことは次の通りです。第一に、事業者が施設の理念・方針を明確にスタッフに伝えることです。何を目指してどのように業務を遂行すればいいのか理解できることにより、スタッフにとって魅力のある職場となります。第二に、支援サービスの質を高くしてやりがいのある職場にすることです。第三に、研修等のスキル向上のための機会を設けることです。自分のスキルを向上させられることにより、スタッフは一層のやりがいを感じることができるようになります。
障害者の放課後等デイサービスの差別化対策
支援サービスの質を高め、他施設との差別化を図らなければ放課後等デイサービスの経営は成功しません。放課後等デイサービスの差別化対策について説明します。
障がい特性に応じたサービス
放課後等デイサービスに通所する利用者の障がい特性は様々で、一人ひとり異なっています。保護者の求めているものは、これまで広く行われてきた、学校の宿題を手伝う学習支援や、遊びを中心としたレクリエーション活動だけではありません。自分の子どもの障がい特性に応じた、きめ細やかな支援が必要とされてきています。例えば、対人関係に困難を抱えている利用者に対しては、社会性を身につけるためのソーシャルスキルトレーニングというカリキュラムを行います。行動療法の専門知識を持ったファシリテーターの元で、集団ゲームを通じて他者との関係性を身につけていくのです。
良質な療育プログラムの提供
放課後等デイサービスには、専門性の高い良質な療育プログラムの提供が求められています。例えば、スタッフのスキルと経験によっては、感覚統合療法、言語療法、音楽療法、運動療育などの専門的手法を取り入れることができます。また、日常生活における技能を訓練する、ライフスキルトレーニングも重要です。挨拶から始まり、身だしなみ、掃除、時間管理、金銭管理などについて、指導員の元で学びます。
障害者の放課後等デイサービスの目指すもの
障害者の放課後等デイサービスの目指すものは、利用者一人ひとりに合わせた専門的な発達支援サービスを提供して、社会性を身につけるお手伝いをし、同時に利用者の家族をサポートすることです。最終的には、利用者の主体性を尊重して、その人らしく生活できることを目指します。障害者の放課後等デイサービスの経営を成功させるためには、このような施設のあるべき姿を常に念頭に置いておかなければなりません。
まとめ
障害者の放課後等デイサービスの経営を成功させるためのポイントは、まず、利用者の日常的な欠席対策を行うとともに、個別支援計画の中での目標に応じた通所日数を設定し、新規利用者の募集を行い、施設の稼働率を向上させることです。欠席時対応加算も申請しましょう。また、ウェブサイトを充実させ、中高年齢者の求職に対応して、優秀なスタッフの確保に努めます。その上で、やりがいのある職場になるようにしてスタッフに定着してもらいます。さらに、良質な療育プログラムを提供して支援サービスの質を高め、他施設との差別化を図っていきます。障害者の放課後等デイサービスの経営を成功させるためには、利用者の主体性を尊重して、その人らしく生活できることを目指すという、施設のあるべき姿を常に念頭に置いておかなければなりません。