訪問介護事業所を売却(M&&A)を成功させるためのポイントとは

超高齢化社会が到来し、訪問介護を必要とする人も多くなり、訪問介護事業所がますます求められる時代となりました。しかし、介護現場では人手不足が深刻な問題となり、今後も逼迫していくことが予想されています。どうすれば人材を確保して質の高い介護サービスを提供できるのでしょうか。訪問介護事業所の経営を成功させるためのポイントについて説明します。

訪問介護事業所の人材確保

介護業界はスタッフの人材不足が常態化しています。しかし、人材確保は経営の要です。どうすれば訪問介護事業所の人材を確保できるのかについて説明します。

問題が共有できる体制・雰囲気作り

訪問介護スタッフの仕事は責任が重く、精神的にも肉体的にも重労働ですが、給料・賃金はあまり高くないので、離職率が高いのが一般的です。一人で現場を訪問し、なかなかマニュアル通りに業務が進まず、トラブルが発生してストレスを感じることも多い仕事です。問題が発生した時に他のスタッフに相談しやすい雰囲気があり、事業所全体で問題を共有するという体制が整っていれば、働きやすくなり定着率も高まるでしょう。また、現場のスタッフを支援する中間管理職の存在も重要です。管理者と現場スタッフの間を繋ぎ、働きやすい職場環境を意識的に創出していく役割を担いましょう。

有給休暇の取得

訪問介護事業の収益率を高めて、スタッフの給料・賃金を向上させることももちろん必要ですが、簡単なことではありません。ところが、スタッフの定着率を高めるためにすぐできる方策もあります。有給休暇を取得しやすくすることも、働きやすい職場にして定着率を高めるためには有効です。全スタッフに、有給の年間取得計画を提出してもらい、その上で勤務シフトを作成すれば、有給休暇の取得が可能となります。休暇の希望が重なった時には調整が必要となりますが、有給が必ず取得できるというのは、ワークライフバランスの良い職場ということでスタッフからの評価が高まります。

潜在介護士の掘り起こし

介護スタッフの人手不足解消の方策として、外国人スタッフの導入の他にも、潜在介護士の掘り起こしが期待されています。かつて現場で働いていた介護福祉士、あるいは資格は取ったものの働いていない介護福祉士に来てもらえれば、大きな力となります。離職した介護人材を復帰に向けて支援する国の制度などもありますので、潜在介護士を念頭に置いて求人を行うことも考えられます。

訪問介護事業所の利用者の確保

利用者を確保することが訪問介護事業所の収入を増やす基本です。どうすれば利用者を増やせるのかについて説明します。

営業活動の展開

通所型の施設とは違って、訪問介護事業所は事務所があってもそこでサービスを提供しているわけではありませんので、建物自体の存在が広告塔になることは期待できません。こちらから事業所存在をアピールしていかなければ、実態を認知してもらうことが難しいので、地道な営業活動から新規の利用者を開拓していかなければなりません。ホームページの定期的な更新や地域へのチラシ配布も効果的です。ある程度、利用者が集まってきたら口コミ効果も期待できるようになります。

他機関との連携

地域のケアマネージャーや医療機関との連携も重要です。訪問介護事業所の活動や空き状況について、定期的に伝えておくことで信頼感が生まれます。日頃の連携があれば、機会が生じた時に利用者を紹介してもらえることにもつながります。

居宅介護支援事業所を併設

訪問介護事業所に居宅介護支援事業所を併設することによっても、利用者の確保が期待できます。同じ経営下にある訪問介護事業所から居宅介護支援事業所に利用者を紹介することが、一定比率までは認められていますので、その枠を活用する価値はあります。

訪問介護事業所の経営管理のポイント

訪問介護事業所の経営管理のポイントについて説明します。

予算の管理

訪問介護事業所の収入は介護報酬であり、利用者数によって増減します。支出については、建物などの設備投資は少ないので、人件費が大きなウェイトを占めます。利用者数が増えてきたらスタッフを増員する必要も生じてきますので、利用者数の推移を予測立てした上で人員配置を行い、予算管理を進めていきます。

人件費の適正化

経営の安定のためにはスタッフの確保が必須ですが、利用者数に対してスタッフが過剰に多くても、今度は人件費が経営を圧迫してしまいます。人員不足にならないように留意しながらも、過剰にならない範囲に収まるように調整していかなければなりません。また、正社員は安定的に雇用できるものの人件費が高くなり、介護報酬の8割前後となってしまいます。一方でパートは、介護報酬の5割程度と人件費は抑えられるものの、離職率が高く不安定要素があります。正社員とパートの双方のバランスを取りながら、パートの定着率を高めていく必要があります。
 

訪問介護事業所の差別化対策

利用者に選ばれる訪問介護事業所になるためには差別化が必要です。利用者の増加につながる、訪問介護事業所の差別化対策について説明します。

地域貢献と地域への情報提供

地域の人々に存在を認知してもらい、地域に根付いた訪問介護事業所になるためには、地域貢献をするという経営方針と、スタッフ全員の合意が必要です。地域の町内会活動などにも積極的に関わり、利用者だけではなく、その家族や地域の住民に対して、感謝の気持ちを持って何らかの貢献をしていきます。同時に、事業所がどんな介護を行っているのかということについても、日頃から情報提供をしていきます。営業活動だけのために情報を発信するわけではなく、訪問介護事業所としての活動を理解してもらうために行うのですが、結果として営業活動に結びつく可能性もあります。

混合介護の可能性を探る

介護保険サービスと、介護保険対象外のサービスを組み合わせて提供する「混合介護」をうまく提供できれば、介護保険サービスだけを提供していた時よりも効率よくサービスを提供できるようになります。その分、収益が増えるわけですが、二つのサービスの同時一体的な提供は不可であるというルールを守らなければならないので、介護保険内外の業務の線引きを厳密に行い、利用者に対して個別対応を行わなければなりません。そのため、サービス提供は簡単に行えるものではありませんが、混合介護の可能性を探っていく価値はあります。

まとめ

訪問介護事業所の経営を成功させるためには、まずスタッフの人材確保が必要です。問題が共有できる体制を作り、有給休暇を取得しやすくし、潜在介護士の掘り起こしを図りましょう。利用者の確保のためには、営業活動の展開、他機関との連携を行い、居宅介護支援事業所の併設を検討します。経営管理のポイントは、予算の管理と人件費の適正化です。また、地域貢献と地域への情報提供や、混合介護の可能性を探り、事業所の差別化を図りましょう。以上のポイントを押さえて、訪問介護事業所の経営を成功させましょう。