近年、ダイエットを含めて健康ブームの流れは強く、フィットネス業界全体として需要の高まりが見られています。しかし一方で、筋力トレーニングに特化した店舗やパーソナルジム、ヨガやその他のサービスも増加しており競争は激化、そのため事業転換を求められている経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで今回は、フィットネスクラブ、スポーツクラブをこれから売却しようと考えている方に向けて「フィットネスクラブを売却する前に考えておくべきことは?」というテーマでお伝えします。
フィットネスクラブとは
フィットネスクラブとは、健康増進や健康維持のために、指導員を配置して運動する場や機会を提供する施設のことです。似たものとして「スポーツジム」がありますが、両者に明確な違いはなく、主に筋力トレーニングを行う運動施設をスポーツジムと呼ぶことが多いようです。フィットネス業態は年々多様化しており、RIZAPなどのパーソナルトレーニングジムに始まり、ANYTIME FITNESSなど24時間型で筋力トレーニングを中心に行うことができる特化型施設、ヨガやピラティススタジオのように大人数にレッスンを提供するクラブまであります。
フィットネスクラブ・スポーツクラブ業界について
フィットネスクラブ業界は少子高齢化の背景もあり、健康維持や運動不足解消など利用者の需要が強くあります。そのこともあり、フィットネスクラブだけでなくパーソナルジムやヨガスタジオなど、形態も多様化しながら店舗数は増えつつ市場は安定的な状態が維持されていました。しかし、2020年から新型コロナウイルスの影響を受け、利用者の減少により売上規模は縮小しています。高齢化と健康ブームの中でコロナ禍においても根強い需要はありますが、多様なニーズに応えるべくさまざまな店舗が展開され競争は激化する流れだと言えるでしょう。
買い手目線で見る事業売却時のポイント
フィットネスクラブの事業売却においては、他の業界と同様で買い手目線で考え準備を行うことが重要です。ここでは買い手目線で見るチェックポイントについて解説します。
物件・施設の状況
特に重要なポイントなのが、物件に関する立地条件や店舗の広さ、設備としてヨガスタジオ、プールやシャワー、サウナなどの揃えられている設備の状態です。その理由としては、フィットネスクラブにはユーザーが通いやすく運動できる広いスペースが必要かつ、揃えられている設備の状況次第で固定費が大きく変わるからです。また、フィットネスクラブは好立地の場所を一定規模の広さで確保しなければならず、適した好条件の物件が出にくいという背景もあります。買い手側としては、好立地かつ取り揃えられている設備が良い状態であれば、改装なども一部で済みスムーズな事業拡大が可能になります。
事業拡大によるスケールメリット
フィットネスクラブは事業拡大によるスケールメリットを享受しやすいです。なぜなら、店舗が好立地で通いやすい場所にあるケースが多く、人の目に留まりやすいです。そのため、店舗数が増えて事業が拡大すれば看板なども増えるため、宣伝やPR効果になりブランドとしての認知を広げることに繋がるからです。大手事業者は特にその傾向が強く、会員はグループ内の施設を使い放題など、規模拡大によるユーザーメリットも増えます。周辺の競合店舗の状況も含めて、買い手が出店したいエリアかどうかが判断材料になることでしょう。
在籍トレーナー・インストラクターの情報
現在所属しているトレーナー・インストラクターの情報も重要なポイントです。なぜなら、フィットネスクラブではトレーナーやインストラクターにファンが付いており、集客に大きな影響を及ぼすからです。そのため、優秀なトレーナー・インストラクターが、経営する会社が変わってもそのまま在籍してくれるかどうかが非常に重要なポイントになります。トレーナーたちは個別で契約されているケースが多いので注意が必要ですね。
売上の安定性(会員の安定)
事業売却においてこれまでの経営実績は重要ですが、フィットネスクラブにおいては特に売上の安定性がポイントになります。なぜならフィットネスクラブは会員制で、一定数は毎月解約するユーザーがいますが、特別なことがない限りは一気に多数の解約が起こることはありません。その中で、一気に会員数が減っていたり毎年会員数が下落傾向であったりする場合は、近隣での競合店舗の参入や、その他の問題発生など何かしらの要因が考えられるからです。買い手側はマーケット調査含めてそれらの点を重視するため、直近から数年間までの売上の安定性は特に重要なポイントとなります。
フィットネスクラブ売却に備えて準備すべきことは?
フィットネスクラブを売却するときの、買い手目線で見るチェックポイントについてお伝えしました。そのポイントを押さえた上で、具体的にどのように売却に向けて準備していけば良いかを解説していきます。
設備状況の改善
買い手の初期投資が少なくなるよう今から準備すべきなのが、設備状況の改善です。フィットネスクラブをオープンするまでに掛かる費用は、物件取得費、工事費、機材費、システム費などがあります。フィットネスクラブは広いスペースが必要で取り揃えなければいけない機材も多く、初期費用が大きく掛かるビジネスモデルです。そのため買い手が初期投資に掛かる費用を少なくなるよう、施設や機材に破損が起きないよう店舗全体に周知徹底すること、清掃も隅々まで行き届いているか改めてチェックしましょう。
エリア情報と店舗コンセプトの整理
エリアの情報と店舗のコンセプトを、改めて整理しておきましょう。なぜなら、フィットネスクラブの経営では店舗周辺にどのような人が多いのかを算出し、そのエリア情報を元にターゲットユーザーを明確にし店舗のコンセプトを定めます。そして、そのターゲットユーザーと店舗コンセプトに適した立地、施設設備を用意することが重要であるからです。フィットネスクラブは、近隣にいるユーザーからの集客が基本です。経営を引き継ぐ買い手にとって役立つ情報になるので、改めて調査し整理することをおすすめします。
固定費の詳細と改善
事業を引き継ぐ買い手目線では、家賃、人件費、水道光熱費が重要なポイントです。費用の詳細を整理し、見直し改善に取り組みましょう。家賃交渉に始まり、人材が無駄に配置されていないかシフト状況の見直し、水道光熱費の契約会社の見直しまで検討できるはずです。特に、電気代については電力会社が多数あり、企業によっては契約会社を変更だけで大幅に費用を減らすことも可能です。フィットネスクラブは広いスペースが必要であり、掛かる固定費も大きいです。一つ一つ見直しを図りながら、買い手にとって喜ばれる状態を作りましょう。
優秀なトレーナー・インストラクターの確保
トレーナーはフィットネスクラブの集客に大きな影響を及ぼすため、経営する会社が変わっても在籍してもらえるよう段取りすることがおすすめです。そのことと合わせて、優秀な人材を今から採用しておくことも良いでしょう。加えて、現在在籍しているトレーナーを優秀な人材に育てるという視点も大切です。優秀な人材の育成ノウハウがあれば、そのことによって高額売却に繋がる可能性もあるでしょう。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか?フィットネスクラブの売却には、立地条件から買い手に掛かる初期費用を減らすための取り組み、会員離れが少なく良い状態で経営できているか、集客に重要な優秀なトレーナー、インストラクターを引き継げるかどうかなど、ポイントは多岐に渡ります。各ポイントを整理しながら、フィットネスクラブ事業の売却に向けて早速動き出しましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。