土木工事会社を売りたいと思ったら!売却(M&A)時のポイントを徹底解説しました!

各土木施設を建設し、最大の特徴として、公共工事が民間工事の約2倍の規模となる点です。ゼネコン(総合工事業者)がメイン顧客となり、元・下請関係という商流上、コストダウン要求が強く、各社収益構造において、課題が見え受けられます。そのような土木工事業界において、いかに売却金額を希望通りに導くのか。今回は業界のトレンドを踏まえた上で、重要となるポイントを解説致します。

業界を取り巻く外部環境

土木工事業界概要

土木工事業界における建設投資額の政府・民間の割合は、おおむね8:2となっており、公的施策の方向性が大きく影響する業界となっております。
新規建設投資が伸び悩む中で、いわゆるストック市場である維持・補修・改修などをいかに対応するかが昨今の本業界のテーマとなります。
また施主となるゼネコン(総合建設業者)から領域ごとに下請け会社に発注し、さらにその孫請け会社に発注されるピラミッド階層となります。さらに元・下請け関係は、直接雇用から専属的な下請けへと変化し、下請構造の重層化につながっています。従いまして、上位業者からの価格要求により、下位業者における収益構造が悪化傾向となりがちとなるのが、当業界の最大の特徴と言えます。

市場規模の将来予測

国土交通省の『建設投資見通し』では、土木工事業界の市場規模は2020年度で約25兆円とされており、オリンピック・パラリンピックを中心とした大型投資などの底上げにより、増加傾向にあります。また今後においても、社会インフラ整備の施策強化が予想されており、継続して公的資金を中心とした需要が見込まれるとされています。
しかしながら需要が安定している反面、課題も挙げられます。労働集約型である業種構造により、技術者の有効求人倍率は、2019年過去最高となる6.69倍に達しています。
慢性的な人手不足に加え、技術伝承等の人材育成おいても課題が挙げられます。

競争環境

土木工事業者は大きく2つに分かれます。特定の専門領域に強みを持つ『専門特化型』、特定の地域に根差し、工事を請け負う『地域特化型』となり、地域特化型の業者においては、土木工事だけでなく、建築工事を含めた建築工事全般を請け負うケースが多くあります。
前述しましたが、市場見込みは安定しており、市場シェアの大きな変更もないことから、業績も連動して好調で推移している企業が多いです。また営業利益率は、平均して3%前後で推移し、2013年以降から上昇傾向にあります。しかしながら利益率の高い工事案件が減少傾向にあることから、新たに参入する事業者においては、独自の技術開発及び新たな営業開拓活動、工事原価低減活動による経営体質の改善が求められます。

買い手が魅力に感じるポイント

社内の有資格者整理

市場規模の将来予測でも記載しましたが、建設業界全体における課題として、慢性的な人手不足・技術伝承・労働環境・労働条件等、労務関係が多く上げられ、特に人手不足・技術伝承においては、緊急的な対策が業界の全企業に求められています。
従いまして、M&Aを検討する上で、買い手側が魅力に感じるポイントとして、従業員数及び技術者をどれだけ保有しているかが挙げられます。
昨今採用コストは全業種において、年々増加しており、企業収益を圧迫傾向にあります。買い手側の視点に立つと、これらの採用コストを包括し、M&Aによる人材確保を目的とするケースが散見されます。売り手側の準備として、スキル(有資格)マップを活用した人材の見える化をお勧めいたします。この機会に売却時に備え、自社の人材整理をしてみてはいかがでしょうか。

各種認可・許可に対する見える化

建設業においては、500万円以上の工事を行う場合には、一般建設業許可が必要です。この一般建設業許可は大きく2つに分かれており、国土交通省が許可する大臣許可と各都道府県が許可する都道府県許可の2種類がある。また総額3,000万円(建築一式工事は4,500万円以上)の工事を下請け事業者に発注するためには、特定建設業許可が必要です。この建設業許可には、各種申請書・添付書類の作成や役所の審査を受ける必要があります。M&Aにおける買い手側の2つ目の魅力として、企業買収と合わせて、この建設業許可の取得が挙げられます。前述した通り、許可申請には各事務手続き等が必要となり、買い手としては許可取得を目的とするケースがあります。一度自社が保有している許可の見える化を図ってみてはいかがでしょうか。

所属するエリアの状況把握

前述した通り、建設業許可には、都道府県別での許可制度があります。従って買い手側からすると買収する企業が所属するエリアもポイントの1つとなります。エリア毎の土木工事の建設投資額を見ると、関東エリアが全体の29%と最も多く、東北エリアが16%、そして中部11%、近畿・九州10%と続きます。所属するエリアの市場規模・推移は非常に大事な要素です。また建設業においては、協力業者・下請業者がいなくては、業務を行えません。買い手企業が新たにそのエリアに参入する際に、0ベースで協力関係を築くよりは、すでにそれらの業者と関係性がある企業を買収するほうがリスクを低減することができます。
自社が所属するエリア特性を今一度把握してみてはいかがでしょうか。

土木業界におけるM&Aスキームと最も多く活用されるスキーム

土木工事業界として最も多く活用されるスキーム

M&Aスキームとして、吸収合併や新設合併、株式売買、事業譲渡等の様々なスキームがありますが、土木工事業界において最も選択されるスキームは、株式売買となります。
前述したM&Aにおける買い手側の魅力となるポイントにもありました、建設業許可、所属エリアにおける協力業者・下請業者との関係性を効果的に活用する上では、売り手企業の法人格を残す形となる株式買収が最も有効と言えるからです。また人材・技術者の取得を含めてもM&Aをする上で、共通するのが企業とともに『時間を買う』ことです。M&Aスキームの中でも株式売買は約1カ月程度で完結するため、短期間でM&Aが実現します。
このように売り手の法人格を残したM&Aを積極的に行うのも業界の特徴と言えます。

まとめ

土木工事業界は、市場予測も好調で魅力のある市場である中で、人手不足や技術伝承等、多くの課題を抱えています。そうした課題に対して、M&Aによる解決策を求めるケースも多く見受けられます。前述した通り、所有する従業員・技術者や建設業許可、企業が所属するエリアなど、自社が保有する資源を整理及び見える化することは売却金額を引き上げる上で、有効となります。売却を検討する上で、今回のポイントを是非参考にしてください。