介護保険適用で「安定している」と思われがちなデイサービス、通所介護、通所リハビリ事業所ですが、実は今デイサービス等の介護事業所のM&Aが増えています。
デイサービス等の介護事業所の経営は決して楽とはいえず、今はむしろ経営に苦しんでいる施設が多数存在します。
デイサービスや通所介護、通所リハビリ事業所の現状と、M&Aにおけるメリットについて詳しく解説していきます。
デイサービス業界の現状
デイサービス業界は、一時期施設数が大幅に増えたものの、近年は減少傾向にあり、さらにコロナ禍によって経営不振や倒産に至ってしまう業者も増えています。
安定しているはずの保険適用のデイサービスが経営に苦しんでいる理由と、現状について詳しく見ていきましょう。
2006年の制度開始以降施設数は激増
小規模なデイサービスの制度が開始したのは2006年からです。
定員18名以下の小規模なデイサービスの制度が開始されたことによって、設備投資の少なく少ない人員で運営できるため多くの事業者が小規模デイサービス業界へ参入しました。
その結果、制度開始から2017年には事業所数21,014と大幅に増加しています。
2015年度の報酬改定で大幅なマイナスに
2万以上の施設数となった小規模デイサービスですが2015年以降に経営は苦しくなります。
団塊の世代が65歳に達した2015年、3年ごとに見直されてきた介護報酬が大幅に改訂され9年ぶりのマイナスとなり、介護報酬全体で2.27%のマイナスとなりました。
売上の主な収入である介護報酬がマイナスになったことによってデイサービスの経営は一気に苦しくなっています。
コロナ禍による収入減少
さらにデイサービス業界には新型コロナウイルスも大きなマイナスの影響を及ぼしています。
高齢者へ感染すると重症化するリスクの高い新型コロナウイルスへの感染を懸念して、利用者の多くのがデイサービスへの訪問を控えたためです。
また、実際に高齢者施設でクラスターが起きた事例も散見されています。
新型コロナウイルスの感染拡大によってデイサービス施設は利用者の減少という新たな課題に直面しています。
倒産する事業者が多い
介護報酬の減少、新型コロナウイルスの影響による利用者の減少によって倒産するデイサービス事業者は相次いでいます。
東京症候リサーチによると、2020年の「老人福祉・介護事業」倒産は112件で介護保険法が施行された2000年以降で最多の倒産件数を更新したとのことです。
このうちデイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」の倒産は36件となっており、新型コロナウイルス感染拡大によって確実にデイサービスの経営は苦境に立たされていることが分かります。
デイサービス事業を買収するメリット
業者の淘汰が進むデイサービス業界において買収を進めることによって次のようなメリットを期待することができます。
- 施設利用者の確保
- 熟練の職員を雇用できる
- 地域における地盤確保
- 老人ホームなどへの集客
デイサービスは同業者が買収しても他業種の業者が買収してもさまざまなメリットを得ることが可能です。
デイサービスを買収する4つのメリットについて詳しく解説します。
施設利用者の確保
既存の施設を買収することによって施設利用者を確実に確保することが可能です。
新規の施設が利用者を確保することは簡単ではありませんし、コロナ禍においてはさらに困難です。
既存施設を買収すれば困難な利用者確保を容易に行うことが可能です。
熟練の職員を雇用できる
施設を買収することによって職員も確保することができます。
高齢者相手のデイサービスは、職員の熟練度が非常に重要です。
未経験者を0から育てるよりも、熟練の職員を雇用した方が質の高いサービスを提供することができるので、この意味でも既存の施設を買収するメリットはあるでしょう。
地域における地盤確保
地域において信頼と知名度を確保していくことは簡単ではありませんし、実現しようと思えば時間とお金がかかります。
既存の施設を買収することによって地域における地盤を作ることができるので、たとえば、デイサービスを足がかりに老人ホームを作るというような場合も老人ホームの集客がしやすいなどのメリットを得られる可能性があります。
老人ホームなどへの集客
デイサービスを買収することによって、デイサービスの利用者を老人ホームなどの施設へ移行することができる可能性があります。
すでにデイサービスを利用している人は、老人ホームへ入居してもらうことができる可能性の高い見込み客だということができます。
老人ホームを経営している事業者がデイサービスを買収することによって、デイサービスの利用者を本業の老人ホームへ誘引することができるようになります。
デイサービス業界の今後
デイサービス業界の今後は決して楽ではありません。
今後は、少ない利益を多くの顧客から稼ぐ「薄利多売」の波がデイサービス業界にも訪れることが予想されます。
そのため、デイサービス業界にもスケールメリットが求められるでしょう。
デイサービス業界の今後の見通しについて見ていきます。
高齢化によって利用者の増加はさらに見込まれる
今後、高齢化はますます進んでいきます。
2040年には日本の高齢化はピークに達すると言われており、65歳以上が約4000万人を超えると予想されています。
そのため、デイサービスなどの高齢者介護施設はますます利用者が増加していくものと考えられます。
利用者数という観点だけで見れば、デイサービスをはじめとする介護事業はまだまだ伸びる部門であると考えられます。
介護報酬の減少によって単価は厳しくなる
高齢化の進展とともにデイサービスの利用者は増加していくことが予想されますが、それがそのまま売上や利益の増加につながるわけではありません。
社会保障財政にも限りがあるため、今後はさらに介護報酬が削られることが予想されます。
そのため、これまでのように「高齢者を受け入れば受け入れるほど利益が拡大する」というわけではなく、効率的な経営ができない事業所はますます経営が苦しくなるでしょう。
デイサービスにもスケールメリットが求められる
介護報酬が下がっていく中、その分を利用者負担に転嫁できれば問題ありませんが、それにも限度があります。
やはり、事業所が経営努力によって経費を削減して効率のよい経営を行う必要に迫られるでしょう。
効率性も求めるために「広い施設で多くの利用者を集める」などといったスケールメリットが求められます。
つまり、今後はますます規模が小さくどうしても経営が非効率になりがちな小さな事業所は淘汰されていくでしょう。
デイサービス業界は生き残るためにM&Aが必要になることが予想されます。
まとめ
介護報酬で安定経営のイメージのあるデイサービス業界ですが、実は介護報酬の減少や新型コロナウイルスの影響によって経営は非常に厳しい状況に置かれています。
今後は、M&Aで規模を追求していくか、老人ホームなどとセットで経営していく必要があります。まずは専門家へご相談ください。