電気工事業を売却(M&A)するときのポイントとは!電気工事・電気通信工事を売りたいときに読む記事

電気工事業の仕事内容としては建物の電気工事を行うことです。イメージとして、建物に電力会社がケーブルを引いたところから建物側の工事を担当します。電力メーターや分電盤、スイッチ、コンセントなどを取付していきます。もちろん、電力会社側のケーブル敷設などの電気工事も行います。

工事区分

電気工事の区分として、高圧設備と低圧設備、特別高圧設備に分けることができます。
一般の戸建て住宅では低圧設備となっています。ビルやマンション、工場などの規模の大きい建物では高圧設備として電気工事を行います。特別高圧設備は電力会社の関連工事や大規模な工場で扱う設備になります。

一般的な電気工事

一般的な電気工事として、天井裏や壁内に配管や配線を通すことで引込した電気を各部屋や照明やコンセントなどの必要な電気機器に電気を供給するための工事をおこないます。
生活や仕事に支障が出ないように、天井や壁内、床下、躯体の中などを適切に配管・配線します。部屋の使用用途などを考慮してどの程度の電気容量が必要なのかをチェックしながら計画を立てます。
空調設備やエレベーター、厨房設備などに対しても電源を供給するため電気容量のチェックを行いながら工事を行います。

電気工事業界動向

事業構造

電気工事業界では一般的な電気工事と電気通信工事をメインにしている会社にわけることができます。住宅内やビルなどのインターネット環境や電話、放送設備などの通信設備、両方を行っている会社も少なくないです。
電気工事会社には、区分ごとに取り扱いが許可される資格があるため、各種資格を取得している方がほとんどです。重複して何種類も取り扱いが可能な方もいます。建設業許可を取得するうえでも資格取得や経験年数などの条件が必須なため、資格や経験が有利に働きます。
電気通信工事に関しても建設業許可や資格取得によって規制があるため資格や経験の有無が影響を与えます。

工事請負形態

民間工事の請負工事ではゼネコンの下請けとして工事に参加することが多いです。ゼネコンが施主より一括発注を受け、各担当工事会社に下請けとして契約します。元請け会社から一次下請け会社、二次下請け会社とピラミッド式の構造になります。ゼネコンから大手電気工事会社、その下請けとしてほかの電気工事会社が入ってくることもあります。
一方、公共工事では分割発注方式が推奨されてきています。一括発注とは違い、建築工事や空調設備、電気工事を分離してそれぞれの専門会社に分割して発注する方式です。この場合、元請け企業として工事を担当することになります。下請け企業として工事に参加することよりも工事金額にかかる経費等を下請け企業として参加するよりも多く手にすることが可能です。
分離発注の場合は材料費の仕入金額等をメーカーや代理店などと交渉することによって利益を確保することもかのうでありますが、下請け企業として参加する場合は、労務費のみの契約になることもあるなどによって利益を確保することがむずかしいこともあります。

関連法規

電気工事業は経産省による「電気工事業の業務の適正化に関する法律」(電気工事業法)によって規制されています。電気工事士法による有資格者でなければ行えない工事があるため新規参入の敷居は低くはないです。そのほか、電気通信工事の関連法規は消防法などがあるが、各種業界団体の基準等も存在します。

市場動向

業界イメージ

ほかの建設工事業と同様に長時間労働や危険なイメージ、休日が少ないイメージがあるため業界全体として高齢化が進んでいます。建設業界でのパワーバランスや建設工事の工程上、電気工事が最後の施工になります。工程上、建築工事が進んでいく中で空調工事や衛生工事では電気工事よりも大きな配管や勾配をしっかりととる必要があります。電気工事は細いケーブルを多く施工することで、他の工事種目よりは融通が利きやすそうに見えると言われています。
最後に苦労する実態もありますが、工事金額としては、全体としての金額はほかの工事ほど大きくはならないことが多いです。

業界の需要

地域経済の景気によって電気工事業の需要も変動します。建築工事一括工事や分離発注の両方で地域経済の景気動向に影響を受けます。景気が悪くなるにつれ、建設需要や設備投資が少なくなってきます。
建設工事に付随して電気工事業界も需要が低くなります。日本の地域性として地震や大雨などの災害が多い地域のため、災害復旧などの一時的な建設需要は少なくないです。
しかし、土木工事や建築工事などがメインのため電気工事に対しての災害復旧での出番は限定的ではあります。

買い手のメリット

売り上げの獲得

全体の売り上げが増加すると、工事金額のうち諸経費として計上している金額を確保することができます。一般的な福利厚生や工事に必要な諸工事などがありますが、そこで利益も確保することが可能です。
全体の売り上げを増加させることで会社の利益になります。

人材不足の解消

すでに、資格取得している職人の確保は建設業界の問題と認識されています。それを解消する意味でもM&Aは有効です。現場の技術者として登録しなければならない制度もあるため、多くの工事物件に対応するためには技術者の確保は必須です。現場の職人を稼働させるためにも工事現場を獲得する必要があります。

技術を受け継ぐ

建設業界では現場の職人の高齢化が問題になっています。電気工事業界でも同様です。職人がしっかりと仕事をこなせているうちに若い人たちにノウハウを伝えていくことで会社の技術力が損なわれることを防ぐことが可能です。会社組織としては1人だけが行える工事になってしまうことは経営リスク上、よろしくないです。病気などで出社できないこともある状況も考えるとほかの人に分散していくことも考える必要があります。

売り手のメリット

経営の安定化

日々の会社経営の安定に悩むことは想像ができます。会社で働いている職人や社員にも悩みは薄々感じています。前は良かったのに今はよろしくないと感じられては職人離れにもつながる可能性があります。

職人の雇用確保

長年、共に働いてきた職人さんたちが会社の苦境によって職を失うことは避けたいですよね。阿吽の呼吸で働いていた方々の雇用を守るためにもM&Aは有効です。長年ともにすると、家族の方々までみんなが知り合いになります。

会社売却によるリタイア後の生活を考えられる

会社経営をしている方にとって、24時間365日休みはないといわれます。心労は計り知れないです。社長の気持ちは社員にはわからないと言われることの所以です。

M&A の確認事項

若手人材が豊富

高齢化が進んでいる電気工事業界では若手の確保が課題です。
M&A を検討する際、若手の有資格者がどのくらい在籍しているのかチェックすることは必要です。有資格者であれば働き始めて数年しか経っていないことは少ないですので、技術やノウハウを伝えていける会社なのかを判断するためのポイントです。施工管理技士を取得している職人は貴重ですので若手の確保は必要です。

工事実績があるか

工事実績を確認させてもらい、どの程度の工事実績があるのかを確認します。難易度の高い工事実績があれば技術力が高い会社だと判断することができます。難易度の高い工事が発注される場合、工事規模や同程度以上の工事実績の提示を義務付けて工事発注されることもあります。難易度の高い工事実績を施工している会社であれば、入札に参加することもできますし指名されて契約することも可能です。

取引先の確認

M&A を検討する際のチェックポイントとしてどのような取引先を持っているのかも重要です。
建設業だけではないでしょうが、過去に取引を行った会社であるほうが安心して依頼することができます。民間工事で多くの場合、元請けとなる建築会社とはどのような取引関係なのかは重要です。信頼を得ているならコンスタントに工事をまかせてくれる可能性が高いです。難易度が高い工事を下請けとしてでも受注することができれば会社の実績としてや担当者の実績にもつながります。
工事の担当者を選任する場合、コリンズ・テクリスに登録することで業界として認められることが可能です。コリンズ・テクリスは公共工事でも使われています。また、技術者の複数工事への重複することを防ぐことにも使えますので便利なシステムです。

まとめ

電気工事業では、民間の工事は建築工事会社からの下請け工事がメインとなります。公共工事では工事ごとに分割して発注する方式が推進されています。そのため、建築工事会社や空調、衛生工事会社との関係性も重要になります。難易度の高い工事をコンスタントに施工した実績があれば会社としての評価は高くなります。
また、工事発注の際に同様以上の工事実績を求められることもあります。電気工事業界だけではなく、建設業界全体として高齢化の問題が深刻化しています。そのため、若手の技術者が多い会社は重宝されます。工事を受注する際や施工する際に、施工管理技士や電気工事士の資格が必要になりますので資格取得は必要です。高齢化が進んでいて若手の技術者が少なくなっている現状では資格取得者がいるのかどうかが重要です。高齢化による電気工事会社での技術を伝えていくことにも課題があります。
単純な作業に見えることもありますが、個々のこだわりやうまく納まる方法など職人の経験によってスムーズに工事が進むこともありますので、若手の育成が課題になります。